ラリー・モンテカルロ・ヒストリック参戦記 その2 本番前日・レキ同行
また初めに競技の説明を。ラリー・モンテカルロ・ヒストリックはレギュラリティラリーという競技で、よく知られているSSラリーとは違う。レギュラリティラリーとは決められた速度で競技区間を走るラリーで、競技区間の決められた数カ所のポイントに到達した時間がどれだけ理想のタイムからズレているかで減点されて、最終的に減点が少ない車両が勝ちである。例えば時速50kmで走れと言われたらストレートもヘアピンも時速50kmで走らないとならない。もちろん無理なのでヘアピンで減速した分は次のストレートで速度を稼いですぐに時速50kmのペースに合わせる。昔は日本もこの形式のラリーが多かったらしく、このレギュラリティーラリーの競技区間の目標タイムが0秒になったのがSSラリーである。正確さを競うので車両の走行距離を正確に記録するラリコンが必須となるが、冬に行われるこのラリーでは雪の降る山道を時速45kmで走れなどと無理なことを行ってくるのでSSラリーのように競技区間をかっ飛ばさないと間に合わない。しかし今年はフランスも暖冬で雪が全くない。今年は例年とは全く別物のラリーになってしまったらしい。雪が無いせいで各チームの戦略も変わってくる。
1月30日
7時ごろ物音で目が覚めた。みんな働いているので仕方なく起床。これからラリーの間は睡眠時間が取れなくなる。
ラリコンは今年レストアした日産チェリーでは学生が作ったものを使うが、他の車両ではドライバー側が用意してきた物を使う。チェリー以外で使われるのはGPSと前輪のセンサーの両方で走行距離を測る優れものであった。まだセンサーを2輪のうち片方しか付けていないと言うので朝はセンサーを付ける作業。ドライバーさん達が11時にはレキ(コースの下見)に出たいと言うのでそれまでになんとか終わらせる。
11時になってレビンとトレノの2台がレキに出かけることに。近くで片付けをしていると「ヨシハラ!お前レキ行けるか」とご指名が入った。トレノの助手席に乗って道案内が出来る人を探していたらしい。自分は本部にいても雑務以外特にこれといってやることはなく(その雑務が結構多いのだが)、自分にしか出来ないということもなかったので二つ返事でレキに同行することにした。
初めてフランスの路上に出たが山道も制限速度が80km/hとかなり高い。高速ワインディングからつづら折りのコーナーまでバランスがよく、路肩が広く2車線あるため道幅も広く運転しやすそう。というよりドライブするには最高だと思った。助手席で道案内してるだけでも気持ちよさそうだと思った。またガードレールが所々なく、岩の壁があるだけだったりして安全性に不安があるが、その分景色がよく見えて気持ちいい。10kmくらいの感覚で本当に小さい街が現れ、教会を中心に広がる石造りの街は絵画を見ているように綺麗だった。いつか必ず自分の運転でまた行きたいと感じた。
この日はラリー最終日に行われるモナコ近くの二つの競技区間のレキをしにきた。最終SR(競技区間)がかの有名なチュリニ峠である。1時ごろチュリニ峠の頂上に到着。ドライバーさん達にお昼をご馳走してもらった。
チュリニを下っている時にトレノの燃料がなくなったので携行缶から給油した。少し走ったらドライバーさんから吹けないとの事一度止まって燃料キャップなどの確認をしたが問題はなく、もう一度エンジンかけたら吹けるようになった。キャブにエアが噛んでいたのではないかとの事。そうして走っていると先行していたレビンが路肩に止まっているのを見つけた。燃料がゼロとの事。20Lの携行缶に10Lしか入っておらず、昨日の長距離移動の後に給油していなくてタンクにもあまり入っていなかったらしい。完全に学生側の通達ミス。唯一その場にいた学生としては大変申し訳なく感じた。チュリニ峠の麓の街ソスペルにもガソリンスタンドはないらしい。トレノの燃料も次のガソリンスタンドまで持つか怪しく、ガソリンを買いに行ってガソリンが足りずバラバラに止まってしまうのは避けたいとの事で本部に救援を呼んだ。とりあえず牽引でソスペルの町まで行くことに。レビンのドライバーさんは持ってきたRabbitというラリコンの素晴らしさを説明してくれた。実際かなりよさそう。
周りが暗くなってきた時に救援のキャンターがきた。つづら折りが多い道をなんでトラックで来たんだと思ったが本部では今他の車が出払ってしまっていてキャンターしかなかったらしい。かわいそう。もう暗いので帰ってからやろうとしていたフォグライトの軸調整をこの場ですることに。帰る時に横乗っていたがやっぱりフォグとドライビングランプ合わせて4灯あると明るくてコーナーとか先の道とか見やすいな。
帰ったらチェリーのスパイクタイヤのピンが全部抜かれていた。ホンダ生のIが昨日からほぼ寝ずにやったらしい。雪のない路面ではスパイクが滑って全く食わないのでピンを抜いていて、特殊なサイズなので買おうにも店頭にはないっぽい。確かに帰りにレビンの後ろを走行中にスパイクから火花が出ているのを見た。レビンとトレノはハーフスパイクなのでこのままいくらしい。
探せばいくらでも仕事は見つかるのでどこかで区切りを見つけて自分から寝ないといけない。この日は2時くらいに寝たと思う。
続く